世界の珍味、珍エピソードにギョッ『地球グルメ大図鑑 世界のあらゆる場所で食べる美味・珍味』

Array

目次

世界123カ国の情報が詰まった食の大図鑑

本書は、米国デラウェア州を本拠地にする旅行・メディア企業「アトラス・オブスキュラ」社が運営するウェブメディア「アトラス・オブスキュラ」の一部として食に関する情報だけを集めた「ガストロ・オブスキュラ(GASTRO OBSCURA)」から、さらに厳選した情報を1冊にまとめたもの。
本書、日本語版は総ページ数448。
巻末の索引だけでも21ページもあります。

それだけの情報がここに集められ、日本語で読めるということ自体が素晴らしいこと。おうちにいながらにして、世界中の食を体験できるのです。
取り上げられているのは、南極を含む世界8地域、123カ国。
当然ながら同社がある米国の情報がいちばん多く、全州の食情報が載っています。
次にカナダ、そして中南米の国々と続きますが、ヨーロッパ情報の充実はなかなかのもの。
それらひとつの項目について800字前後、歴史的人物や史実に関するコラムは1400字程度の記事にまとまっているので読み応えがあります。
あ、レシピはほとんどありません。食テーマの史実、コラム、文化史です。

ホント?の目を跳ね返す記述

とはいえ、こういった図鑑は時に旅行者にとって「珍妙」な出来事が大げさな驚きとともに取り上げられ、それがその地域を代表する事柄であるかのような記述が見受けられることがしばしばありますよね。
すると途端に「その情報、誰か裏取りした?」という疑いの目で見てしまいます。
本書でも、その傾向があるのでは? と思った私は、真っ先に日本の項目を開いて、じっくり読んでみました。

結果、「なぜこれが取り上げられる?」というほど珍妙ではないものの、一般の日本人のほとんどが「知ってるけど体験したことはない」と言うであろう「流しそうめん」や、新潟県の「わらアート」には正直、疑問符がつきましたが(笑)。
でも、旅行者が体験した情報から成り立っていると思えばまあ許容範囲ですよね。
東京駅の駅弁屋さんとか(確かにショーウインドウは壮観)、相撲部屋のちゃんこ鍋(国技だし)、日本生まれの西洋料理「洋食」などは、「そうそう!」と日本人のほとんどが同意する内容でしょう。
知っていることと体感と本書の記述に大きな相違がないんです。

すると、俄然他国の食も気になってきます。

知的好奇心をくすぐる午後にぜひ

そういう人には、こんな楽しみ方がおすすめ。
本をがばっと開けて偶然に目にした国の情報をじっくり読んでみたり、巻末の索引で気になる言葉を拾って該当ページを読み込んでみるとか、もちろん行ったことがある国を開いて確かめてみたり。

例えば、索引に「ワインで作った教会」という項目を見つけました。
普通、「ワインで作った」というと、「ワインを売って作ったお金で作った教会」かと思いますよね。
あるいは、「ワインの瓶を利用して建築された教会」とか。あり得ない話ではないと思います。

該当ページを探してて読んでみると、なんと。
「干ばつでモルタルを溶く水の代わりにワインを使って建築された、と!!!
ブラジル南部の、カペラ・ノッサ・セニョーラ・ダス・ネベスという教会の話でした。なんでも、このあたりはイタリア移民によるワイン醸造のメッカだそうです。
納得。

このような「へぇ」が世界中から集められていてですね、次から次へと読みたくなっちゃうんです。

そうしていると、「大人のための夏休み自由研究」といった気分になって、PCを開いて、現地語サイトを見つけて、Google翻訳機能に感謝しつつ、時間を忘れてさらに奥深く読み込んでいっちゃう。
夏休みの午後の過ごし方としてどうでしょうかー。
時空を越えて知的好奇心を広げるチャンスです。

これを日本語版としてきっちり翻訳し、出版してくれた日経ナショナルジオグラフィックに深く感謝です。

あ。時々、ぎょっとする記事もあるのでご注意を。

 

編著者プロフィール

(本書より)

セシリー・ウォン
『アトラス・オブスキュラ』のライター・小説家。

ディラン・スラス
アトラス・オブスキュラの共同設立者でクリエイティブ・ディレクター。

ガストロ・オブスキュラについて
ガストロ・オブスキュラの使命は食べ物や飲み物を通じてこの世界への驚きと好奇心を喚起することだ。旅行・メディア企業であるアトラス・オブスキュラの一部として2017年にスタート。記事、動画、レシピ、地球規模での飲食店ガイド、さらに世界をめぐる旅行体験記を掲載し、各地の食べ物や飲み物を通じて、それらが作られる土地、それを作る人々を知る機会を読者、旅行者、そして好奇心旺盛な人々に提供している。

 

スタッフ

(日本語版)

編著者:セシリー・ウォン、ディラン・スラス、他
訳者:今井仁子、大浦千鶴子、梅田智世、山北めぐみ、片神貴子
編集:尾崎憲和、葛西陽子
デザイン:川名潤
編集協力・制作:リリーフ・システムズ