『シグネチャー・ディッシュ 食を変えた240皿』

シグネチャー・ディッシュ 食を変えた240皿
定価:6,380円
発売日:2020年8月20日
発行・発売:KADOKAWA
判型・体裁:A4変形(27.0 x 21 x 4cm)、452ページ

どどーんと分厚い上製本です。 452ページもあるので、厚さ4cmになります。
KADOKAWAの『モダニスト・キュイジーヌ』『ファミリー・ミール フェラン・アドリアの家庭料理』に続く豪華本。

目次

立派な上製本に驚いてはいけない

といっても、欧米では、料理書といえば上製本が当たり前なので驚いていてはいけないんです。

ちょうど昨日、とあるシェフとお話していて、自著を欧米のかつての同僚に見せたら「これはBOOKではなくMAGAZINEだ」と言われた、と。

あああああそうですよねそうですよね、ソフトカバーですものね…。

しかし、日本の出版マーケットは狭いんです。
上製本にするにはコストがかかりすぎるんです。
英語で全世界を流通するのとはわけが違うんです!

…とやっていると、本書の解説から脱線しそうになりますが。

 

日本人シェフの一皿発見!

でも、日本語マーケットと英語マーケットの市場の違いが、世界に影響する一皿になったかどうか、を決定づける大きな理由のひとつであることは確か。

日本語だけで完結してしまっている日本の料理本づくりが、日本のシェフたちが作り出す一皿を世界に広める機会を狭めている、とするのはあながちはずれていないと思います。

食文化を現す一皿。
たくさんあるはず!

とページをめくれば、嬉しいことに、日本の、日本人シェフによる一皿も紹介されていて、日本人シェフの発想力、調理技術、芸術性に、読んでいるこちらまで誇らしくなります。

 

2部構成でレシピ、文化的背景も

ではいよいよページをめくりましょう。

1部と2部制ですが、あまりにページが多いからか、もともとなかったからか、目次がありません。
(欧米本はよくあります)
その代わり、巻末の索引が充実していて、食材別の並び。

構成としては、第1部が世界のレストランのシグネチャー・ディッシュを一つずつ紹介し、第2部でそのレシピと解説があります。

第1部のトップバッターは、1686年にパリで最初にオープンしたカフェのうちの一つ、「ル・プロコップ」の「ジェラート」からスタート。

そして2019年の「ル・クラレンス」の「リードヴォーと海苔の天ぷら、出汁、ショウガのせん切り、キャビア添え」で終わるわけですが、あらら日本が誇る食文化がフランス人シェフ、クリストフ・プレによって世界にインパクトを与えたというわけですか。

またもここで複雑な思いにかられるのは否めない…。

 

料理本好き同士で語り合いたい

ただ、世界的に有名な選者7人によるそれぞれの解説は、食文化史がコンパクトにまとまった雑誌の特集記事を読んだような充実感と情報量。

メインディッシュからサラダ、主食、デザートに至るまで、ありとあらゆる世界にインパクトを与えた一皿について頭に入れておけば、外食の楽しみ方がさらに深まること請け合いです。

また、写真ではなく元シェフだったというイラストレーター、アドリアーノ・ランパッソ氏による再現イラストが、さらに想像力をかき立てます。

いやもう、7人の選者一人一人のまえがきを読むだけでも深いです。

そんな本書、ぜひ手にとっていただきたいものですが…高額な本なので、店頭ではシュリンク包装されている書店が多いと思います。
私が購入した書店では見本誌がありました。
見つけたら、じっくりご覧になって、ぜひレジへ。

現役編集者としては、こんな本を編集するってどんな気持ちなんだろうか、と編集者目線で見てしまう一方、ただただ楽しい、おもちゃを与えられた子どものような気持ちになる一冊であることは間違いありません。

料理本好き同士で集まって語り合いたい一冊です。

 

著者プロフィール

(本書より)

ジャング,スーザン
パティシエとして修業を積み、サンフランシスコ、ニューヨーク、香港のホテル、レストラン、ベーカリーで働き、その後、香港の『サウス・チャイナ・モーニング・ポスト』フード・アンド・ドリンク部門の編集者になった。香港、マカオ、台湾で、世界のベストレストラン50およびアジアのベストレストラン50の評議員を務めている。

カーン,ハウイー
『ニューヨーク・タイムズ』のベストセラー『スニーカーズ(Sneakers)』の共著者であり、『私立探偵になって(Becoming a Private Investigator)』の著者、また200カ国以上で視聴されている食と文化のポッドキャスト「プリンス・ストリート」の設立者兼司会者である。ジェームズ・ビアード賞受賞者であり、『ウォール・ストリート・ジャーナル』に寄稿する編集者でもある。

ムールク,クリスティーン
『ボナペティ』の編集主幹であり、食のコンサルタント会社、ビューローXの設立者でもある。『ニューヨーク・タイムズ・マガジン』の元フードエディター。

ノース,パット
オーストラリア人ジャーナリスト・批評家。メルボルン・フード&ワイン・フェスティバルのクリエイティブディレクターを務めている。紀行作家・レストラン批評家として20年あまりの経験があり、『グルメ・トラベラー』の編集者を14年務め、『サヴール』『トラベル+レジャー』『フール』『アファー』、『ラッキー・ピーチ』『グルメ』等でも記事を発表している。2006年からは世界のベストレストラン50のオセアニア部門の投票委員も務めている。

ペトリーニ,アンドレア
フランス在住の文筆家、ジャーナリスト、フードキュレーター、文化活動家である。前衛シェフ集団ジェリーナズに帯同して運営を担当したり、ソウルやロサンゼルスで美術評論家のニコラ・ブリオーとともに新しい料理本の展示会を企画したりしており、それ以外のときは、ワールド・レストラン・アワーズの審査員長席に座っている

サラザール,ディエゴ
リマとメキシコシティに拠点を置く、受賞歴のあるジャーナリスト。ソーシャルメディアの時代のメディア業界について記した『僕たちはなにもわかってない(No hemos entendido nada)』の著者でもある。ラテンアメリカ、ヨーロッパ、アメリカ合衆国のメディアに記事が掲載されている。

ヴァインズ,リチャード
ブルームバーグのフード批評主任であり、レストランについての著述を15年間続けている。過去には世界のベストレストラン50でイギリスとアイルランドの審査員を務めた。40年以上のキャリアをもつジャーナリストであり、かつてはロンドンの『ザ・タイムズ』の一員でもあった。アジアに13年間滞在し、『チャイナデイリー』、『アジアン・ウォール・ストリート・ジャーナル』、『サウス・チャイナ・モーニング・ポスト』に外国人編集者として勤務した。ブルームバーグには1995年に加わった。

 

制作スタッフ

訳者:  目時 能理子  廣幡 晴菜  三瓶 稀世  三本松 里佳

監修: 辻静雄料理教育研究所

日本語版デザイン: 寺澤圭太郎

DTPレイアウト: 木蔭屋