その組み合わせ気づかなかった!『ぼくのおいしいは3でつくる 新しい献立の手引き』

おいしいは3でつくる 新しい献立の手引き
定価:1,540円
発売日:2022年2月14日
発行・発売:辰巳出版
判型・体裁:A5変形(21 x 14.8 x 1.1cm)、128ページ

作家で料理家として各界で活躍中の樋口直哉さんの本はいつも挑戦的です。

作家だから、その文章力を活かして、しっかり読ませてしまうのは当然としても、ハンバーグやスパゲッティといった誰もが知っている料理にも、レシピにいつも革新を織り交ぜてきます。
プロの料理人としての現場経験に加え、食材や調理法に関して独自の研究を重ね、調理科学を加えて説明できる稀有な料理家です。
いつも新刊が出るたびに「今度は何を?」とワクワクしながら手に取っています。

本書も「『3』を意識した新しい献立」というのが大テーマですが、掲載されている10献立、全30レシピをしみじみ読んでみると、「3」を忘れるほどの驚きがどっさり詰め込まれています。
プロの料理人が研究者の顔を合わせ持つとこうなる、とでもいいましょうか。

「3」を意識した新しい献立とは?

では、タイトルになった「3」とは何か。これは、

●食材
●3色
●3角形

の3セオリーに由来しています。
それらセオリーを「3皿」でまとめると毎日の料理が完璧に楽になるよ、という樋口さんの提案に基づき、本書では前菜、メイン、デザートという3皿で構成された10の献立が提案されています。

献立を前菜、メイン、デザートの3皿としたのは、樋口さんがフレンチ出身だからというのはありますが、和食においても「一汁一菜」、つまり汁もの、飯、主菜もしくは香の物で食卓が構成されるわけですから、「3」は日本の家庭料理にもすんなり収まります。
取り入れやすいんですね。

そんな樋口さんのレシピの何がそんなに革新なのか。

定番料理なのに革新とは?

それは、のっけからいきなりガツンとやってきます。

例えば、献立1。
「進化するレシピ」という小テーマで、前菜におひたしサラダ、メインは四角いハンバーグ、デザートにプリンとコーヒーゼリーというラインナップ。

どれも定番料理ばかりですが、なんでおひたしがサラダで、ハンバーグが四角いのか、デザートはプリンかコーヒーゼリーのどちらかでよくない? ……などあれこれツッコミを入れていると、ちゃんとこたえが書かれています。
いずれも、当たり前のつくり方を見直して、進化させているのです。
気づかなかった、言われてみればそうかもしれないと、読みながらへーほーと腑に落ちます……が、なんでそこに気付いた? とまた新たな疑問がわいてくる…の繰り返し。
樋口さん自身は、その探究心を尊敬するシェフ、ヘストン・ブルメンタールの言葉を借りて説明します。曰く、

「おいしい料理は伝統を壊すのではなく、新しい方向へ導くことによって生み出される。料理は革新(レボリューション)でなく、進化(エボリューション)すべきなんだ」と書いていますが…(中略)…先人から受け取ったレシピを時代に合うように変えていく。…(中略)…いつもそれを考えながら、レシピを考えています。

こうして、読めば読むほど説得されて、新しいつくり方を受け入れる気になるのですよね。

縦組みの読む料理本マジック

そうした理屈がストレスなく理解できてしまうのは、もしかしたらこの本が「読む料理本」だからかもしれません。
レシピの部分もすべて縦書きです。
しかも文字量が多い。
でも、樋口さんがそばにいて、口頭で説明してくれているかのようで、むしろとてもわかりやすいのです。
縦組みの料理本マジックとでも言いたくなるくらい。

もうひとつ特筆すべきは、本書は装丁デザインを担当した鈴木成一氏がすべての撮影を行っているということ。
デザイナーが切り取った樋口さんの料理はとても自然な顔をしています。
レストランで出てくるような芸術的な一皿とは違う、でも無造作に盛り付けた素人の料理でもない。
「こういう料理なんです」という体で写っているんですよねぇ。
本書のテーマ「3皿」が気負いなく表現されているのです。
そんな樋口さんの理論と料理、料理を誌面に写し込んだ写真を一冊にまとめ上げた編集者の力も忘れてはなりませんよ。
見どころの多い本なんです。

 

著者プロフィール

樋口直哉(ひぐち・なおや)
作家・料理人。1981年東京生まれ。服部栄養専門学校卒業。フランス料理の出張料理人として活躍後、作家に転身。『さよならアメリカ』(講談社)で第48回群像新人文学賞を受賞してデビュー。同作で芥川賞候補となる。主な著作に『大人ドロップ』『スープの国のお姫さま』(小学館)、『おいしいものには理由がある』『新しい料理の教科書』(マガジンハウス)、『最高のおにぎりの作り方』(KADOKAWA)ほか多数。
note https://note.com/travelingfoodlab/
Twitter https://twitter.com/naoya_foodlab

 

制作スタッフ

撮影・ブックデザイン 鈴木成一デザイン室
本文DTP 平林美咲(鈴木成一デザイン室)
編集 神吉佳奈子

 

目次

ふつうの材料で、最高においしい、家ごはん

3を意識したら、料理は上手になる。
食材は3つだと簡単
3食あると見栄えがいい
3角形に盛り付けると美しい

3皿と決めると、毎日が楽になる。

樋口式 新しい献立の手引き
その1 前菜のつくり方 工程は少なく、流れをつくるための助走に
その2 メインのつくり方 机合わせとソースで、料理の完成度を上げる
その3 デザートのつくり方 市販品やフルーツを組み合わせて、食後の甘いひと口を

献立1 進化するレシピ
前菜 おひたしサラダ シャキシャキ野菜の歯ごたえは、氷水でつくる
メイン 四角いハンバーグ カリッとふんわり、四面立体で焼き上げる
デザート プリントコーヒーゼリー 異なるテクスチャ―を組み合わせる

献立2 シンプルだけど、贅沢な料理
前菜 ブラマンジェかにかまサラダ コーヒー豆がかにかまの味を引き立てる
メイン 贅沢スパゲッティ ブイヨンで茹でたパスタにW卵使い
デザート バジル風味のオレンジ ゼリーがつなげて3品で調和

献立3 新しい魚料理
前菜 ホタテのカルパッチョ ホタテは縦にキルト、歯ごたえがよくなる
メイン 和風アクアパッツア 焼き魚でも煮魚でもない、水で焼く調理法
デザート パイナップルとクリームチーズ 果物+チーズ+香りで、リッチな風味に一変

献立4 かきこむおいしさ
前菜 青菜といんげんのごま和え グズグズに煮たなすが、和え衣のつなぎ役に
メイン 鶏そぼろの親子丼 米の粒子に寄り添った鶏そぼろでつくる
デザート 柿柚子 柚子のワタを使ってとろける口当たりに

献立5 鍋と会話する
前菜 きゅうり、キウイ、ミントのサラダ 味がなじむよう、きゅうりは叩いて潰す
メイン 鶏肉のフリカッセ 焼き目と卵黄で、コクととろみをつける
デザート ライム風味のバナナ ライムの酸味で甘みの輪郭がくっきり

献立6 発酵は人にやさしい
前菜 冷やしトマトのアールグレーティー風味 紅茶の風味がトマトのうま味を強調
メイン ポークソテー かんずりごまソース 豚肉の焼き上がりは、中心温度65℃でOK
デザート ごま汁粉 ねりごまを使えば10分で汁粉に

献立7 カレーはソースが主役
前菜 みかんのサラダ 唐辛子と塩で、みかんの甘みを引き立たせる
メイン 羊バターカレー ソースのコクは、じっくり炒めた野菜でつくる
デザート バニラアイスとココアクッキー ココアクッキーを砕いて、土に見立てる

献立8 蒸し料理は電子レンジ
前菜 レンジで温野菜の香味だれ 小さく均等に着れば、効率的に加熱できる
メイン レンジでサーモンの清蒸 レンチンするだけで、切り身がふっくら
デザート ブルーベリーとヨーグルト 短時間の加熱で、フルーツの風味を生かす

献立9 生活向上ステーキ
前菜 グリーンサラダ 布巾で包み、冷蔵庫で冷やせばシャキシャキに
メイン 黒胡椒のステーキ 黒胡椒を潰して焼いて香ばしさに
デザート チョコレートとブルーチーズ 同じ香り成分を重ねて、相乗効果を発揮

献立10 忙しい日こそ、魚料理
前菜 きのこのクリーミースープ きのこをじっくり炒めて、うまみ味を凝縮
メイン カジキマグロのソテートマトとケッパー 塩入りの牛乳に漬けて、しっとり焼き上げる
デザート いちごのムース 生クリームといちごの酸でムースを固める

おわりに

Amazon.co.jpアソシエイト