あのピンチョスが食べたくなったら『バスクバルレシピブック』

バスクバルレシピブック BASQUE BAR RECIPE BOOK
定価:1,980円
発売日:2016年10月11日
発行・発売:誠文堂新光社
判型・体裁:A5(25.8 x 18.4 x 1.6cm)、176ページ

『バスクバルレシピブック』は、スペインのサン・セバスチャンで供されるピンチョスから一皿料理、デザートまで45レシピが掲載されたA5判のハンディな料理本だ。

しかし、ピンチョスのレシピよりも、バルの店先、カウンター、路地といったサン・セバスチャンの佇まいから、バルで働く人たちや客の満足そうな表情につい惹きつけられてしまう不思議な本。

近年、急激に人気となったスペイン北部の美食都市サン・セバスチャンが舞台だ。

目次

世界一の美食の街、サン・セバスチャンのバルとは

バスクとは、スペインの一地方都市ではあるが、フランス国境をまたいで広がる地域を指し、海と山に囲まれ、豊かな食資源に恵まれている。

とくに人口18万人に満たないサン・セバスチャンには、ミシュランの星付き店をはじめ、料理好きの男性たちによるコミュニティである美食倶楽部という存在が美食都市の背景を支えてきた。

そこでは料理のプロもアマチュアも関係なく、入り混じっては美食談義に花を咲かせ、レシピを教え合い、食べて呑んで、互いに料理の腕を磨いてきた歴史がある。

そんな背景に支えられて街の社交の中心を彩ってきたのがバルだ。
サン・セバスチャンの旧市街から新市街へと広がり、夕方にも慣れば、続々と人々はバルに集まってくる。
バルとはいえ、酒を酌み交わすだけの場ではない。
日本でいう居酒屋よりももっとカジュアルで、赤ちゃんを連れた若い夫婦から老夫婦まで年代も多彩。アルコール付きの居酒屋風ファミリーレストランのような存在でもある。

本書は、そんなバルとサン・セバスチャンの美食に魅せられた料理家が、2008年から毎年欠かさず訪れては研究してきたというレシピをまとめたものだ。

料理研究家ならではの作りやすいレシピ

普段の料理研究家としての仕事では、野菜料理に定評のある著者だが、本書にまとめられたバル料理は、サン・セバスチャンで見かけるバル料理そのもの。

いやむしろ、バルの勢いのある盛り付けよりもはるかに美しく芸術的で、思わずつまんでみたくなるような様子。
あのバルの名品、こっちのバルのあれ、などなどサン・セバスチャンを知る人が見たらすぐにわかるような品が並ぶ。

それでいて日本でも作りやすく、日本人の舌にも響くよう調整されているのはさすが料理家。

ただ、惜しむらくは、写真とレシピページが離れていること。
作る側にとっては難のある構成だ。
その分、料理写真やデザインの美しさは際立つので、どこに力点を置くのか編集に迷うところだろう。

その写真は、料理写真界では有名な日置武晴さんが担当しているので、恐ろしく芸術的。写真集のような楽しみ方もできるといっていいか。
レシピの合間にはさまれたバルの様子を見ていると、猛烈にサン・セバスチャンに行きたくなるのだ。

表4の画像はピンチョスがカウンターの上にずらりと並んだ様子を収めたもの。サン・セバスチャンのバルの様子を伝えている。

バスクを愛する著者の言葉が響く

そうはいっても、何年も通い続けてきた著者ならではの、各ピンチョスに添えられた著者の一言やミニ情報がいい。
なかなか生きた情報が得にくいバスクだが、この短い情報を頭に入れて現地に行ったらおそらくああ、となるような一言が見つかるだろう。

旅行ガイドのライターが書いたのとは違う、心からサン・セバスチャンの良さを知り、愛する著者の言葉は響く。

本書は日本でも有名になった元祖、ラ・ヴィーニャによるバスクチーズケーキのレシピが掲載されていることにも注目。
著者があまりのおいしさに毎日通っていたら、「あっけなくオーナーからレシピを教えてもらった」とあるように、バスクはレシピを秘密にするような考えはない。

今ではサン・セバスチャンにあるバルのあちこちで、その店ならではの工夫が施されたバスクチーズケーキが食べられる。

 

著者プロフィール

植松 良枝(うえまつ・よしえ)

料理家。ライフワークでもある野菜をはじめ、旬の食材を使った料理に定評がある。旅好きでもあり、訪れた先の料理に触発されて生まれたレシピも多数。サン・セバスチャンは8年前から毎年一度は必ず訪れている。近著に『春夏秋冬 土用で暮らす。』(主婦と生活社)、『育てて楽しむ はじめてのハーブ』(家の光協会)、『おもてなしと持ちよりレシピ』(主婦の友社)などがある。(本書より)

 

制作スタッフ

撮影: 日置武晴
ブックデザイン: 福間優子
スタイリング: 岩崎牧子
編集: 小野有美子(SAKAKI LAB)
イラスト: 市村 啓
編集協力: 金栗里香
DTP: 小林 亮
プリンティングディレクション: 佐野正幸(図書印刷)
校正: ヴェリタ
調理アシスタント: 五味幹子

 

目次

はじめに

冷たいピンチョス

  • ヒルダ(Recipe P.122)
  • じゃがいもとツナの卵のピンチョス(Recipe P.123)
  • ピンチョス フリースタイル2種 アーティチョークとギンディージャ/ムール貝とツナ(Recipe P.124)
  • かにとセロリのピンチョス(Recipe P.125)
  • マヨネーズ(Recipe P.126)
  • グリーンレリッシュ(Recipe P.127)
  • ベルガラ風 卵とアンチョビのピンチョス(Recipe P.128)
  • ロシア風ポテトサラダと海老のピンチョス(Recipe P.129)
  • スモークサーモンのピンチョス(Recipe P.130)
  • かたくちいわしの酢漬け(Recipe P.131)
  • いわしとラタトゥイユのピンチョス(Recipe P.132)
  • かたくちいわしの酢漬けのインチョス3種 ブルーベリージャム/甘酢レリッシュ/ココナッツ(Recipe P.133)
  • まぐろのタルタルのピンチョス(Recipe P.134)
  • アンチョビのピンチョス2種 バスクカラーのピーマンとアンチョビ/アンチョビとバター(Recipe P.135)
  • マッシュルームパテと生ハムのピンチョス(Recipe P.136)
  • サーモンパテのピンチョス(Recipe P.137)
  • パンと生ハムとサルモレホ(Recipe P.138)
  • トマトとツナクリームのサラダ仕立て(Recipe P.139)
  • レバーペーストと無花果のジャムのピンチョス(Recipe P.140)
  • ブルーチーズとアーモンドのピンチョス(Recipe P.141)

 

温かいピンチョス

  • バスクは食材の宝庫
  • 小いかのプランチャ カラメルオニオンソース(Recipe P.142)
  • たこのブランチャ(Recipe P.143)
  • プロチェッタ4種 たこといかと赤ピーマン/きのことめかじき/海老とベーコン/豚肉とピーマン(Recipe P.144)
  • タンボリル マッシュルームのスープ煮(Recipe P.146)
  • チョリソのシードル煮(Recipe P.147)
  • ベシャメルソース(Recipe P.148)
  • かにのグラチネピンチョス(Recipe P.149)
  • クロケッタ4種 あさり/いかすみ/ポルチーニ/ゆで卵と生ハム(Recipe P.150)
  • 鴨肉のピンチョス(Recipe P.151)
  • アルボンディガス(スペイン風肉団子)2種 ツナとたまねぎ/いわし(Recipe P.152)
  • いわしと赤ピーマンのシガール(Recipe P.154)
  • トルティージャ2種 ツナとたまねぎ/いわし(Recipe P.155)
  • きのこのリゾーニ(Recipe P.156)

 

一皿料理&デザート

  • バルに集う人々、バルを支える人々
  • ピミエントのフリット(Recipe P.157)
  • フィデウア(パスタのパエリア)(Recipe P.158)
  • 豚ヒレ肉のプランチャ マンサナソース(Recipe P.159)
  • きのこのブランチャ(Recipe P.160)
  • たことピーマン、たまねぎのマリネ(Recipe P.161)
  • ピンチョ モルーノ(羊肉のアラブ風串焼き)(Recipe P.162)
  • ゲタリア風魚のグリル(Recipe P.163)
  • あさりのスペイン風ごはん(Recipe P.164)
  • ガトーバスク(Recipe P.165)
  • パンチネータ(Recipe P.166)
  • バスクの黒いチーズケーキ(Recipe P.167)
  • レモンソルベとカヴァのデザート(Recipe P.168)

BASQUE BAR LIST

BASQUE FOOD GUIDE

おわりに

 

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