1976年も2020年も。『聡明な女は料理がうまい』

聡明な女は料理がうまい
定価:1,760円
発売日:2012年9月1日
発行・発売:アノニマ・スタジオ
判型・体裁:四六判(19 x 13 x 2.6cm)、309ページ

1976年に出た初版が文庫になり、そのまま絶版となっていたのがアノニマ・スタジオから2012年に復刊されたのが本書。

このタイトルに思わず手にしてしまう人多し。

「料理がうまい」イコール「聡明な女」という図式に置き換えたい女が当時も今も多いのだ、という意地悪な発見だけでなく、ばっさばっさと切り込んでいく「男勝り」な文章がとにかく心地よいのである。

 

令和の時代にも響く言葉

著者である桐島洋子さんが連発する「女性的」「男性的」という言葉の「乱暴な」使い方やその意味するところは、44年前の発言とは思えない。令和の今でも十分通用する。

さすがに「ウーマン・リブ」という言葉には時代を感じるが、思わず膝を打つ表現がいくつも見つかる。
ちょっと引用してみよう。

――まず料理とは「果敢な決断と実行」の連続である。

――私が知る限り、有能な職業人ほど、また有能な主婦である。

――女の自立は台所の自立から

などなど。
時に「強がりすぎでは?」と思うような言葉が並ぶが、それはこうしたウーマン・リブに邁進してきた先立が勝ち取ってきた権利が今、当たり前としてあるからだろうと思う。

 

母たちの時代の先端を走る女

かくいう私も、本書についてはおそらく初版が出た当時から知っていた……のはたぶん実家の本棚にあったからだと思う。
しかし、手にとらずに今まできたのは、桐島洋子については、同年代の実母が忌々しげに「あの人は…」と言っていた記憶に長いこと惑わされていた。

桐島さんより2歳上の実母は本音では、同書でいうところの「男まさりのいい仕事をするタイプ」の女に魅力を感じていたはずなのに、時代のムードに押し流されて、高度成長期真っ盛りの「幸せな結婚をつかむ女」方向に突き進んだ結果、「なよなよとひたすら女っぽい」団地妻にもなりきれず仕事を始めた。
が、自立とは程遠く、その中途半端さから愚痴を言い続け、女を見下げる昭和10年代生まれの夫を忌み嫌う料理の下手な女として生きてた。

そういう不幸せな母親に育てられた私世代がいざ人の親になったとしても、料理スキルはおろか生活の知恵、社会に立ち向かっていくための自立の芽を子に伝えられないのも仕方がないか、などと言い訳したくなる。だって今のF1世代は、家庭ではなくYou Tubeで料理スキルを学ぶのだし、と。

でも、いつも台所にいる私や夫にちょっと聞いてくれれば喜んで教えるのになあといじけた気持ちになるのも事実だ。

 

ウィットに富んだ人生論

本書の初版には、きちんとレシピがレシピとして掲載されていたようだが、復刻版は文章中の「読むレシピ」だけだ(が、それで十分な内容)。

その代わり、雑誌『暮らしの手帖』の編集長だった(復刊当時)松浦弥太郎さんによる解説付きだ。

「本書は、優れた料理エッセイでありながら、そんな聡明な人になるためのヒントが、スパイスのようにたっぷりと散りばめられていて、ウィットに富んだ人生論としても楽しめる」

と松浦さんが書いているように、性別や年代に関係なく、withコロナの現代にびしっとカツを入れる一冊として読み継がれていって欲しいと思う。

 

著者プロフィール

桐島洋子(きりしま・ようこ)
文藝春秋に勤務した後、フリーのジャーナリストとして海外各地を放浪。70年に処女作『渚と澪と舵』で作家デビュー。72年『淋しいアメリカ人』で第3回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。女性の生き方についての本を多数執筆、翻訳する。マスメディアの第一線で活躍し、独身のまま、かれん(モデル)、ノエル(エッセイスト)、ローランド(フォトグラファー)の3児を育て上げる。(本書より)

 

本書の制作スタッフ

※1976年初版本とは異なる

ブックデザイン: 坂川栄治+永井亜矢子(坂川事務所)
カバー図案: 氏原忠夫
編集: 村上妃佐子(アノニマ・スタジオ)

 

目次

プロローグ 聡明な女は料理がうまい

一章 料理は食いしんぼうの恋人を持つことに始まる/料理事始め

二章 台所道具とは婚前交渉を/台所づくり

三章 料理というじゃじゃ馬ならし/料理合理化のすすめ

四章 優雅なパーティの開き方/人とのじょうずな出会いとは

五章 肉や魚と仲良くつきあうために/肉・魚料理

六章 野菜は伸びやかな感覚で食べよう/野菜料理

七章 オードブルはおしゃべりのセンスで/オードブル

八章 おしゃれの心意気でスナックを/スナック

九章 旅で集めたエクゾティック・クッキング/世界のみやげ料理

十章 味覚飛行十二カ月/世界の味のカレンダー

あとがき

解説・松浦弥太郎(『暮らしの手帖』編集長)

 

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