山田詠美文学のレシピ、言葉を味わいつくして食べる本

Amy's Kitchen 山田詠美文学のレシピ
定価:2,860円
発売日:2025年6月6日
発行・発売:左右社
判型・体裁:四六判・上製(18.8 x 12.7 x 1.5 cm)、112ページ

山田詠美さんの小説に現れる食べるシーンとレシピをまとめた書。
美しいレシピの言葉がおいしさをよりいっそう引き立てています。

 

目次

文学とレシピの両立を叶えたすぐれた書

本書はレシピ本ではありません。
小説でもありません。
ここはまさにAmy’s Kitchen。

小説家・山田詠美さんが紡ぎ出す物語の中でしか味わえない食べ物を、料理家・今井真実さんがこの世の中でも作れるようにしてくれました。
あえてカテゴライズするならば「美食文学」です。

とはいえ、食の業界の大物たちが言う「美食」とはだいぶ違います。

感情をゆさぶるような切ない恋や、気持ちのすれ違い様に食べていた料理など、山田詠美さんの小説の主人公たちと同じ目線で味わう食べ物が取り上げられているんです。
1985年のデビュー作から2018年のエッセイや2020年代の最新作、22品に登場する「食べる」シーンを今井さんがレシピ化し、よりおいしく深く山田さんの物語世界が味わえるようになっています。どれもちゃんとおいしく作れるようになっているのはさすが。

料理レシピといえば、指示語しか書かれていないものですが、今井さんのレシピはちゃんと文学の一部になっています。丁寧に、確実に作れるよう段取りを無駄のない言葉で表現しているのです。普段からレシピを書き慣れている人の言葉選びは研ぎ澄まされていて読みやすい。
レシピを発信しようとしている人はそういう目を持って本書を読んでみるといいと思います。

さらにいいのは、本を紹介するためにスタイリングして撮影された見開き写真。そうか、本の世界観をこう表したのか、とまじまじ見てしまう。デジタル世界にはない陰影が楽しめます。

今ではほとんど見かけなくなった上製本であるのもうらやましいポイントです。いつかこんな本、作ってみたかったなあと思うものの、こういう本はそう何冊もいらないとも思うんです。『山田詠美文学のレシピ』を文字でも食べ物でも味わえる稀有な読書体験をぜひおすすめします。

 

プロフィール

山田詠美
1959年東京都生まれ。85年「ベッドタイムアイズ」で文芸賞を受賞、作家デビュー。87年『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』で直木賞、91年『トラッシュ』で女流文学賞、2001年『A2Z』で読売文学賞、05年『風味絶佳』で谷崎潤一郎賞、12年『ジェントルマン』で野間文芸賞、16年「生鮮てるてる坊主」で川端康成文学賞を受賞。『明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち』『賢者の愛』『珠玉の短編』ほか著書多数。

今井真実
料理家。神戸市生まれ。「作った人が嬉しくなる料理を」という考えを元に、雑誌、テレビ、ウェブ媒体、企業広告をはじめ、多岐にわたるレシピ製作を担当。noteに綴るレシピやSNSでの発信が注目を集める。著書に『毎日のあたらしい料理』『いい日だった、と眠れるように 私のための私のごはん』『料理と毎日』『フライパンファンタジア』『今井真実のときめく梅しごと』『低温オーブンの肉料理』『だいじょうぶレシピ』ほか。

*いずれも本書より

 

スタッフ

写真:今井裕二
スタイリング:朴 玲愛
調理アシスタント:野島二郎(野島商店)
編集:筒井奈央
装幀:岡村佳織

 

もくじ

1980s
『ベッドタイムアイズ』…スプーンのためのかわいそうなリブ
『ジェシーの背骨』…たった一個のじゃが芋
『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』「ME AND MRS.JONES」…ミセス・ジョーンズに捧げるピーチコブレット
『放課後の音符』…恋をした時のジントニック

1990s
『トラッシュ』…ロイ・ロジャースのチキン
『24・7』「ピンプオイル」…ソースが特別なシュリンプカクテル
『ぼくは勉強ができない』…賢者の皮むきサラダ
『120%COOOL』「彼女の等式」…ささやかで贅沢な豚汁

2000s
『A2Z』…成生のプティ・ポワ・フランセ風スープ
『風味絶佳』「夕餉」…足止めを食らっているコトレッタ・アッラ・ミラネーゼ
『無銭優雅』…牛肉の上等を入れたおから

2010s
『タイニーストーリーズ』「モンブラン、ブルーブラック」…バジルアイスクリームにオリーヴオイル
『賢者の愛』…直巳のバターしみしみトースト
『珠玉の短編』「骨まで愛して・・みた」…ナンバリングされた鴨のロースト オレンジソース

2020s
『血も涙もある』…料理研究家 沢口先生の十目稲荷
『私のことだま漂流記』…美味なるチキンソテー
『肌馬の系譜』「ブッディスト・ディライト」…ニューヨークシティ ブッディスト・ディライト

From essays
『私は変温動物』「美味しいもの」…ロブスターにわさび醤油バター
『再び熱血ポンちゃんが行く!』「恐怖のバンドナイト」…ポン製フライドポテト
『熱血ポンちゃんが来りて笛を吹く』「春の美味よ来い」…エイミーズカフェのサーモンケーキ
『ライ麦畑で熱血ポンちゃん』「人生は今だけライスカレー」…茄子とコンビーフの赤いカレー
『吉祥寺デイズ うまうま食べもの・うしうしゴシップ』…眠くなるリコッタチーズのスナック

 

*Amazon.co.jpアソシエイト